
またこの説は、実際に脳に存在する「グリア細胞」が元になったという説もあります。脳内のグリア細胞は神経細胞よりも豊富に存在していますが、脳科学が発達する以前では「脳内の神経細胞をサポートするのみで、信号の伝達には使われていない」と考えられていました。この事から「脳の90%は使われていない」という説が生まれたそうです。ただしグリア細胞は神経の成長因子や神経同士の繋がり、脳環境の保持など重要な働きをしている事が明らかになっており、グリア細胞が損傷すれば神経細胞も致命的なダメージを受け、何らかの障害を引き起こしてしまいます。ちなみにアメリカのとあるテレビCM(1998年頃?)が元になったという説もあるようです。
これらが元になった「人間は脳の一部しか使っていない」という説は、現在でも信じている人がたくさんいます。何故かというと、近年でも、様々な映画やドラマ、映画、あるいはアニメや漫画などで、何の根拠もなく、繰り返し提唱されているからです。特に日本のテレビ番組なんかでは、例えば脳内における血流の変化を、サーモグラフィーのように見せる映像が流れますよね。あれで視聴者は「血流が多い部分がある=その一部だけが活動している」と勘違いしてしまうのです。しかし実際には血流が多くなっていなくても、グリア細胞や神経細胞は活動しており、決して「その部分だけが活動している」訳ではありません。そもそも脳には代替機能というものもあり、専門とする場所以外の場所でも機能を補う事ができます。その意味でもやはり「この機能はこの場所だけが働く」という事はなく、脳全体が使われているのです。
ちなみに空想の世界では、ガンダムで有名なニュータイプなんかもありますが、あれも同じで、そもそも人間は脳全体を使っているので、一時的にでも脳を100%フルに活動させた所で、何か特殊な能力が発揮できる訳ではありません。また別の見方をすると、それだけ脳をフルに働かせたら、栄養や睡眠が人の何倍も必要になるはずです。もし仮に100%近く働かせる事ができたとしても、それを維持する事の方が難しいのではないでしょうか。