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2018年6月6日水曜日

どうして人間は歩く事ができるの?

脳には外側にあって脳全体を占める「大脳皮質(前頭葉・側頭葉・後頭葉)」、その内側にあって神経細胞の密集した核のようになっている「大脳基底核」、その下に脳と脊髄とを結ぶ「脳幹(中脳や延髄)」、そしてその脳幹の後ろに「小脳」が存在しています。人間の脳には「短期的・長期的に関係なく、とにかく記憶をするために働く場所」と「生きる上で必要不可欠な、本能的な記憶をするために働く場所」があります。この内、前者は特に「海馬」と大脳皮質が、後者は小脳と大脳基底核が関係していると言われています。

まず、海馬は大脳基底核の外側を取り巻く「大脳辺縁系」に存在しており、新しく得られた情報を整理し、短期的に記憶する役割があります。また海馬は長期的に必要な記憶を再び整理し、大脳皮質へ送る役割もあります。脳全体の多く占める大脳皮質は様々な知覚を認識して「考える」事ができる場所であり、ここで利用する頻度が増えると長期的な記憶が可能になります。一方、これらは意識して取り出して使う場合の記憶であり、例え長期的な記憶でも使わなければ時間が経過するほどに取り出す事が難しくなっていきます。つまり記憶も劣化するという事です。

例えば大きな事故で数ヶ月間あるいはそれ以上歩く事ができなくなった場合、海馬や大脳皮質に記憶していた「歩く」という記憶も当然劣化してしまいます。もしそうして「歩く」という記憶が劣化してしまった場合、そのままでは食べ物にも飲み物にもありつく事ができませんから、生物として困りますよね。そこで重要になるのが小脳や大脳基底核です。この部分には動物として本能的に行われる運動を細かく制御する役割があり、継続すればするほど記憶を深層に定着させます。これによって例え数ヶ月間歩いていなくても、歩く際の細かな体の動きを調整する事で再び歩く事ができるのです。

同様に、例えば何年も自転車に乗っていないのに乗る事ができたり、何年も泳いでいないのに泳ぐ事ができるのはこれがあるからです。「歩く」と比べるとそれらは「生きる上で必要不可欠」とまでは言えませんが、幼少期に行い、また継続するほど本能的な記憶になります。スポーツ選手などはそうして様々な動作を本能に近いレベルで行っているのです。

ちなみにただ単に「その場に2本の足で立ち続ける」というだけでも、体が前後左右に傾かないよう脳が制御しています。また「2本の足で歩く」という動作では、どちらか一方の足を前へ出す際、一時的にもう片方の足だけで体を支えなければならない時間があります。つまり足を前へ出す度に細かな調整を行っており、それによって人間は真っ直ぐ前へ歩く事ができるのです。更に、走る際にはそれを高速で行って体のバランスを保っています。人間は二足歩行を行う唯一の生物ですが、これらができるのはその細かな制御を容易に行う事ができるほど、人間の脳が高度に進化しているからです。