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2018年4月8日日曜日

「テーマ」体質を変えるための運動術

「運動」と聞くとすぐに「つらい」「きつい」というネガティブなイメージを持ってしまう人は多いですが、一口に「運動」と言っても様々な種類があり、それぞれ目的に応じた実施方法というのがあります。必ずしも「やめたくなるほどの激しい運動」をしなければならないという訳ではないのです。体質を改善していく上ではそういった「運動」に対する固定概念を改める必要があり、この記事ではそれについて私なりに考えた事をまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。尚、この記事に書かれている事は私の個人的な意見であり、他の方の考え方を否定するつもりはありません。色んな考え方があって良いと思うので押し付けもしません。同調したい方のみ同調して下されば幸いです。
(記事作成日時:2014/4/7、更新日時:2016/10/31,2017/3/1,2018/4/8)



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★無酸素運動と有酸素運動について

運動は「運動を行う際に起こる体の反応」によって主に2つの種類に分けられます。それが「無酸素運動」と「有酸素運動」です。それぞれの特徴を理解する事で、「運動」という言葉に対する考え方を変えていきましょう。

●無酸素運動について

無酸素運動とは文字通り酸素を使わずに行う運動(筋肉を動かす事)の事です。そもそも「酸素を使わずに筋肉を動かす事なんてできるのか?」という疑問を持ってしまいますが、例えば不意に崖の上から石が落ちてきて、それを咄嗟に避けるというような場合、十分に酸素を吸ってから筋肉を動かしたのではとても間に合わない訳です。それが鋭利な刃物だったり、自動車のような質量の大きな物体という事もある訳で、そのような場合、素早く筋肉を動かさなければ容易に命を落としてしまう事があります。酸素を利用せずに素早く筋肉を動かす事ができれば、そういった様々な状況に対しても咄嗟に体を動かす事ができ、無酸素運動の真の役割はそこにあると私は考えています。

この無酸素運動の仕組みを簡単に説明します。無酸素運動ではまず「ATP(アデノシン三リン酸)」という物質がエネルギーとして利用されます。ATP自体は様々な細胞の活動エネルギーとして利用されているものですが、特に使用頻度の高い筋肉に多く存在しています。筋肉は動かす度にこのATPを消費し、消費される度にATPを補充しており、それによって筋肉を素早く動かす事ができるのです。しかし消費される際のスピードは運動の強度によって大きく異なり、全力での運動では僅か8秒程度で枯渇してしまうと言われています。例えば陸上競技・男子短距離の100m走では世界記録が9秒台となっていまよね、実はそれにはこれが大きく関係しています。

しかしそうして全力での運動を行ってATP枯渇させたとしても、僅か数分程度で補充されると言われています。これは前述のように咄嗟の動作に対応するためです。よって全力の運動後であっても、しっかりとした休息を取れば再び全力での運動が可能になります。例えば陸上競技・男子短距離の100mでは、準決勝や決勝をその日の内に行う事もありますが、それにはこの事が関係しています。ちなみに無酸素運動で得られるATPは、細胞内に存在するミトコンドリア内においての「解糖系(糖を代謝する過程でエネルギーを得るサイクルの事)」を動かす過程で得られるものです。これが「糖は必須栄養素である」と言われる理由です。

では、そのATPが枯渇した状態で運動を行うとどうなるのか?についてですが、ATPが足りなくなって来ると筋肉や肝臓などに蓄えておいた「グリコーゲン」を利用します。グリコーゲンは糖の一種であり、これを分解する過程でATPが得られます。これによってATPを供給する事で、ATP単体よりも更に長い時間、素早く筋肉を動かす事ができます。ただしこのグリコーゲンの貯蔵量にも当然限界はあって、全力での運動では33秒程度しか持たないと言われています。つまりそれ以降ではグリコーゲンも枯渇してしまうため、ATPの供給が間に合わなくなり、次第に筋肉を動かす事ができなくなっていきます。またグリコーゲンを分解する際には「乳酸」や「リン酸(筋肉の収縮に関与するカルシウムと結合しやすい)」が作られ、それらが蓄積する事でも筋肉の動きは鈍くなっていくと言われています。尚、乳酸は「疲労物質」として知られていますが、肝臓内で分解する事で再びエネルギーとなるため、グリコーゲンが枯渇した状態では乳酸も分解し、少しでもエネルギーとして利用しようとします。

前述のように無酸素運動の初期に利用されるATPは、十分な休息を取ればすぐに補充する事ができます。しかしそのATPを供給するために必要なグリコーゲンは回復が非常に遅く、全力での運動を行って完全に枯渇させた場合、再び同じ貯蔵量まで回復させるためには最低でも2日、人によってはそれ以上の時間がかかる場合があります。そうしてグリコーゲンが枯渇している間は当然ATPの供給量が減るため、筋肉の動きは著しく鈍くなり、全身に大きな疲労感を伴う事になるでしょう。回復のためには糖を摂取する事が重要です。一方、例えば普段から糖質制限を行っている人では、筋肉内に蓄えている元々のグリコーゲンの量が少ないため、ちょっと体を動かすだけで疲れてしまいます。その状態では「やる気」「集中力」「判断力」が低下し、日常生活にも支障をきたす事があります。

尚、無酸素運動の中では「筋トレ」が身近です。筋トレでは筋肉にストレスを与え、そのストレスに抗う事で筋肉が大きくなります。そうして筋肉が大きくなると、筋肉内に蓄える事のできるグリコーゲンの貯蔵量を上げる事ができます。それによって筋肉は「糖の逃げ道」として機能するようになるため、血糖値を抑制できる可能性があります。また筋トレを習慣化すると、グリコーゲンを消費する際の効率やグリコーゲンを合成する際の効率が上がる他、グリコーゲンを消費した際の回復の効率も上がっていきます。糖は時間が経過すると脂肪として蓄えられてしまいますが、つまりそうして糖の代謝が上がれば、新たな脂肪の蓄積を抑える事に繋がり、肥満予防にもなります。

ちなみにですが、次の重要な日(試合など)までに一時的にグリコーゲンの貯蔵量を増やす事を「グリコーゲンローディング(カーボローディング)」などと言います。グリコーゲンはそのように無酸素運動によって消費されるので、重要な日の前には運動を制限し、炭水化物を意識的に摂取する事が重要です。スポーツ選手ではそうして当時のパフォーマンスをできるだけ高めるよう努めています。



●有酸素運動について

有酸素運動とは文字通り酸素を使いながら行う運動の事です。有酸素運動では無酸素運動のように、瞬間的に大きな力を発揮するという事はできませんが、酸素と共に、体内にある脂肪などのエネルギーを少しずつ燃やしながら運動を行います。そのためエネルギーさえ尽きなければ、ほぼ無限に運動を続ける(実際にはその前に体が壊れてしまう)事ができます。

有酸素運動の仕組みを簡単に説明しますが、有酸素運動で利用されるエネルギーもATPです。無酸素運動においては糖を代謝するエネルギーサイクルである「解糖系」を動かす過程でATPを得ましたが、有酸素運動においては主に「クエン酸回路(別名TCA回路)」を動かす過程でATPを得ます。特にこのクエン酸回路では、解糖系を経て得られたピルビン酸をアセチルCoAに変換する事で利用、あるいは脂肪酸から得られるアセチルCoAを利用する事でATPを合成します。解糖系と比べるとATPを合成する際のスピードは遅いのですが、酸素を消費しながら少しずつATPを合成し、より長時間筋肉へエネルギーを供給する事ができます。

運動を行うと無酸素・有酸素に関わらず、体温の上昇に伴って汗をかきますが、特に有酸素運動においてはクエン酸回路を動かす過程で水と二酸化炭素が作られ、それが体外へ排出されます。そのため有酸素運動では大量の発汗を伴います。汗には水分だけでなく水溶性ビタミンやミネラル(カリウム、ナトリウム、カルシウム等)も含まれており、汗の排出する量が増えるほど、体内の水分・ビタミン・ミネラルは失われていきます。つまり効率の良い有酸素運動を行うためには水分・ビタミン・ミネラルの補給が必要という事であり、「有酸素運動と食事制限の併用はできない」という事が言えると思います。

尚、そのように有酸素運動は「脂肪を燃やす方法」としてよく知られていますが、普段から意識的な運動を行っていない人では、有酸素運動のエネルギーサイクルに切り替わるまでに少し時間がかかり、中々脂肪が燃えてくれない事があります。そのため脂肪が燃える前に運動を止めてしまう人も多く、これが「20分以上続ける」とよく言われる理由になっています。しかし「20分以上続けなければ脂肪が燃えない」という事ではありません。それより短い時間の運動でも、正しく行えば有酸素運動になり、脂肪は燃えます。「20分」とはあくまで目安に過ぎず、厳密に守る必要はないものです。

ただ、ダイエットに対して高い関心を持っている日本人でも「有酸素運動=つらい」という印象を持っている人は多く、そもそも正しい有酸素運動の方法を知らない人が殆どです。有酸素運動は前述したように「少しずつエネルギーを使って行う長時間の運動」の事であり、あまりに激しい運動では無酸素運動の要素が出てきてしまいます。普段から運動を行っていない人ではその強度設定が上手くできておらず、「有酸素運動を行っているつもりだが、実際には有酸素運動になっていない」事が多いのです。有酸素運動を行って脂肪を燃やすためには、「今の自分の体力以上の強度で行わない・無理をしない」「自分の体力に合わせる」「低強度で長時間行う」という事が重要です。例えばウォーキング一つにしても腕の振り方、歩幅の大きさ、足を踏み出す際の速さなどを調節する事ができ、そうして自分で強度を調節するべきです。

一方、有酸素運動は「長時間続ければ続けるほど良い」かというとそういう訳でもありません。これは何故かというと、あまりに長時間の運動では肉体的なストレスによって特に筋肉が酸化・分解されてしまい、せっかく無酸素運動によって鍛えた筋肉が萎んでしまう可能性があるからです。そうなれば有酸素運動を行う事で、逆に基礎代謝が低下するなんて事にもなりかねません。また長時間の有酸素運動と短時間の有酸素系運動(例えば短時間の内に、全力に近い運動と不完全休養を繰り返すインターバルトレーニング等)を比べた時、エネルギーの消費量はそこまで大差ないという研究結果もあります。つまり「脂肪を燃やす」という事を目的として有酸素運動を行う場合、長時間ダラダラ走るだけというのは無駄が大きいと言えると思います。もちろん長期的に考えればどちらを行ったら良いのかは個人の自由です。



●無酸素運動と有酸素運動・・・デメリットを考えてみよう

筋肉は収縮させる事で周囲の血液を温め、それを全身へと循環させて体温を維持する役割も持っています。そのため無酸素運動・有酸素運動に限らず、筋肉を動かす事は特に冬場など気温の低い時期では体温を維持するために非常に役立ちます。また筋肉を動かすと筋肉にある細胞が血液を求めるため、毛細血管が細かく枝分かれしていくと言われています。これによっても末梢の血流、及び末梢にある細胞の栄養状態が改善されていきます。更にはその細胞へ血液を送るための心臓の機能や、血液を作るための機能も改善されるため、実際には筋肉だけでなく全身に良い効果が及びます。このように運動は良い事だらけなのです。

無酸素運動のデメリットを挙げるなら、まず見た目の変化が大きいという事でしょうか。筋肉が大きくなると体の凹凸をハッキリさせるようなグラマーな体型に見せる事もできますが、行き過ぎると、それこそ人間ではないような見た目に変化させる事もできてしまいます。また筋肉を大きくするほど、その維持には時間も労力もお金が必要になる上、ボディビルダーまで行くと徹底した生活習慣の管理が必要になり、突き詰めるほど心身へのストレスは大きなものになります。余談ですが、ボディビルダーのように筋肉を鍛える事を仕事にしている人では、筋肉それ自体のエネルギー消費が激しく、不意に病気をしたりして食事量が落ちた際、場合によっては餓死してしまう事もあるそうです。

もちろんそれは稀な例ですが、筋トレのような無酸素運動では、一般的に筋肉に対して大きなストレスを与える事になります。特にハードなトレーニングによって筋肉に対して大きなストレスがかかると、「活性酸素」のような物質が大量に作られます。これによって酸化ストレスが生まれ、細胞が分解・劣化しやすくなります。それを抑えるためのケアを怠れば、逆に健康を害してしまうでしょう。

一方、有酸素運動を行う際のデメリットは・・・実はこれも意外に多くて、まず前述のように「目的を持って行わないと時間の無駄になりかねない」という事です。ダラダラと長時間行うような有酸素運動よりも効果的な運動があるなら、そちらを行った方が時間の使い方として効率的だと思われます。もちろん短時間で脂肪を燃やす事ができるような「短時間の有酸素系トレーニング」はかなりハードです。時間短縮になり、自分が使う事のできる自由な時間は増えますが、肉体的にも精神的にも疲労が大きく、毎日はできません。長期的に見てどちらを選ぶかは個人の自由です。

また有酸素運動の場合、外で行う事も多いですが、太陽からの紫外線が敵になる上、行う際に大量の発汗を伴うので、適切な水分・ミネラル・ビタミンの摂取が必須です。それを怠れば乾燥・脱水・細胞の劣化などに繋がり、逆に健康を害するだけでしょう。更に有酸素運動では無酸素運動のように筋肉を鍛えて大きくする事はできないので、行う事ではむしろメリハリのないスタイルになってしまう可能性があります。脂肪を落とす事では確かに細くなるでしょうが、体の凹凸がハッキリとしないため、バランスは悪くなります。よって有酸素運動は基本的に「全身への血流を促す」「余分な水分・塩分の排出する」「体温調節機能を高める」などを目的に行うべきで、「運動する=ランニング」「痩せる=長時間走る」などと安易に考えない方が良いと思います。もちろん行うのは個人の自由ですけどね。




★「そもそも筋肉はどういうものなのか」を考えてみる

●筋肉の構造について

筋肉を構成する細胞には「ミオシン」と「アクチン」の2種類があり、それぞれ「フィラメント(囲いのようなもの)」という線状の蛋白質を構成しています。アクチンフィラメントは「Z膜」という膜で区切られ、Z膜の両端から中央に向かって何本も平行に伸びています。その間をやはり平行に並んでいるのがミオシンフィラメントで、2つのアクチンフィラメントに挟まれるような形で1つのミオシンフィラメントが繋がっています。このアクチンフィラメント・ミオシンフィラメント・アクチンフィラメントという一つ一つの区切りの事を「筋節(サルコメア)」と呼びます。尚、ミオシンフィラメントはアクチンフィラメントの間に入り込む事ができ、それが筋肉全体で起こる事で「収縮」する事ができます。

その筋節はたくさん横並びする事で「筋原繊維」を構成しています。またその筋原線維が束になったものが「筋線維(筋細胞)」、その筋線維が束になったものが「筋線維束」、更にそれが束になって「筋肉」を形作っています。このように筋肉は非常に緻密な構造をしているのです。ちなみにアクチンフィラメントとミオシンフィラメントは重なった部分と重なっていない部分があります。フィラメントは規則的に並んでいるため、重なった部分は色が濃く、逆に重なっていない部分は色が薄く見えます。つまり見た目として縞模様に見えるため、これが「横紋筋」という名前の由来になっています。

●速筋線維と遅筋線維について

前述した「筋線維」は大きく分けると2つの種類があると言われています。それが「速筋線維(速筋)」と「遅筋線維(遅筋)」です。

・速筋繊維とは
「速筋」は瞬間的に大きな力を発揮する事のできる筋肉であり、前述したような糖をエネルギーとする「無酸素運動」において主に使われます。特に無酸素運動では筋肉に対して大きなストレスを与える事ができ、そのストレスに抗おうとする事で速筋は大きくなっていきます。それを利用したのがいわゆる「筋トレ」です。それにより筋肉は鍛えるほど大きくなり、見た目に大きな変化をもたらす事ができます。しかしその反面持久力はなく、その大きな筋力は長続きしません。

・遅筋繊維とは
「遅筋」は持久的に力を発揮し続ける事ができる筋肉であり、前述したような酸素や脂肪などをエネルギーとする「有酸素運動」において主に使われます。遅筋は鍛えても速筋のようには大きくならず、瞬間的に大きな力を発揮する事もできませんが、使い込む事によってエネルギー効率が高まり、運動を行う時間を伸ばす事ができます。ちなみにですが、実際には速筋と遅筋の両方の要素が混ざり合った「中間筋」もあり、速筋と遅筋ではそこまで厳密に役割分担をしている訳ではありません。要はどちらに適した性質を持っているかという事です。

・速筋と遅筋から考える筋肉の役割
筋肉には共通して「収縮する事で熱を作り出し、周囲の血液を温め、それを循環させる事で体温を上げる」という重要な役割があります。つまり筋肉が大きいほど作り出す熱も大きくなり、体温の維持が容易になります。一方、速筋と遅筋ではその「熱を作り出す大きさと時間」が大きく異なります。

簡単に言えば速筋は短時間で一度に大きな熱を作る事ができます。しかしその熱は長時間持ちません。逆に遅筋は大きな熱を作る事はできませんが、長時間に渡ってジワジワと少しずつ熱を作る事ができます。これを踏まえて考えてみると、「脂肪が燃えにくく溜まりやすい」という体質を改善していくためには、「遅筋が機能する事が重要」という事が分かると思います。遅筋が効率良く働いていれば、「日常生活で勝手に脂肪を燃やしてくれる」という事であり、これこそが「脂肪が燃えやすく、溜まりにくい体質(温まりやすく冷えにくい体質とも言う事ができる)」に繋がるのではないでしょうか。


●速筋と遅筋の割合は生まれながらにして決まっている

しかしながらこの速筋と遅筋の「元々の割合(素質)」は「生まれながらにして決まっている(殆どは両親から受け継がれる)」という事が分かっています。生まれながらにして決まっているという事は、どれだけ筋トレをしようが、どれだけ長時間走ろうが、その元々の割合を変える事はできないという事です。特に速筋と遅筋の割合は、例えば陸上競技や水泳競技などタイムを競うようなスポーツでは顕著に差として現れるため、実は生まれた瞬間に「スポーツにおける向き不向きが決まってしまう」と言う事ができます。

そう聞くと「自分はスポーツに向いていない」「自分には才能がない」などと考えてしまうかもしれません。しかし実際は違います。何故なら「見た目だけでは速筋と遅筋の割合を判断する事はできない」からです。

●筋肉の「素質」は見た目だけでは分からない

前述したように、確かに速筋と遅筋の割合は生まれながらにして決まってしまいます。しかし日本人は平均的に遅筋の割合が高い民族とされ、具体的には速筋が30%程度に対して遅筋は70%程度あると言われています。これには何百年何千年も農耕民族として生き永らえてきた事が強く関係しており、この速筋と遅筋の割合だけを考えれば、日本人は「生まれながら長時間の有酸素運動を行うような競技に向いている」という事が言えると思います。

ただしその素質は「速筋と遅筋の割合」だけを考えた時の話であり、長時間の運動能力に関係している要素なら遅筋以外にもあります。例えば血管の太さ・強度、血液を作る能力、ミトコンドリアの量・能力、肺や心臓の大きさ・強さ、酸素を取り込む能力などの他、走るための技術(足の使い方、腕の使い方、ペース配分等)や使い込み(トレーニング及びその競技を続ける事)などが挙げられます。それらの様々な要素が関係しており、いくら遅筋の割合が高くても、それらの能力が低ければ長時間の運動能力は生まれません。

また逆のパターンもあって、例えそれらの素質が全てあったとしても、遅筋の割合が低いというような場合もあります。つまり体の使い方が上手く、練習を続ける事で長時間走り続ける事ができる人の中にも、遅筋の割合的に見れば実は長時間の運動には向いていないというような場合もあるという事です。特に競技レベルが低いほどそれはあり得る事で、遅筋の割合が影響するほどにまで自分を追い込む必要がない場合には、見た目の「マラソンが速い」という主観だけで向き・不向きを判断するのは難しいのです。

何が言いたいのかというと、つまり限界まで自分を追い込んでいたり、あるいはそうして自分を追い込んでいる人同士での競い合いでなければ、自分の「素質」を気にする必要はないという事です。「私は長距離走に向いていない」「運動に向いていない」「スポーツに向いていない」などという事を、運動をしない事の理由にしてしまう人は多いですが、それは大抵の場合、言い訳にしかなっていないのです。そもそも平均的な日本人は脂肪を効率良く利用する事ができる体を持っているはずで、それでも肥満に悩んでしまうのは、遅筋を上手く使えないような体の使い方(後述)をしているか、健康・ダイエット・美に対する考え方が間違っているかのどちらかでしょう。。

●速筋の割合は鍛えるほど見た目で分かるようになる

陸上競技・男子100m走の決勝においては、現在ほぼ全ての選手が9秒台で走っており、日本人はそのスタートラインに立つ事すらできていません。あの舞台で走る事ができる海外の選手ではその速筋の割合が80%以上あるとも言われており、その割合を考えれば、彼らは生まれながらにして短距離走など「瞬発的な力を要する競技に向いている」という事が言えます。逆に日本人選手の多くが未だに9秒台で走る事ができないのは、前述したように速筋の割合が低く、またいくら筋肉を鍛えてもその元々の速筋の割合を増やす事ができないからです。

特に速筋は鍛えれば鍛えるほど太く大きくする事ができるため、生まれつきの速筋の割合による差は、トレーニングを行うほど大きな差として現れます。例えば速筋の割合が30%程度しかない人と80%以上もある人が、同じペースで同じだけのトレーニングを続けた場合、当然速筋の割合が80%以上ある人の方が筋肉は太く大きくなります。日本人選手がスタートラインに立つと、周囲の選手と比べて際立って体が細く見えると思います。日本人もハードで効率の良いトレーニングをしているはずなのですが、それでも埋められない差があるという事がよく分かります。

しかしながら例えそのような瞬発的なスポーツであっても、速筋の割合や筋肉の大きさだけで全てが決まる訳ではありません。これは単に「速筋の割合が高い=トレーニングの成果が出やすい」というだけの話であり、そもそも速筋の割合が影響するほどにまで自分を追い込んでいなければ、その「差」を考える必要はないはずです。「走る」という技術レベルが高い者同士での競い合いであれば、「あぁ・・・速筋の割合が低い日本人は不利なんだな」「骨盤の傾きや足の長さなど骨格的に不利なんだな」と考えても良いかもしれませんが、我々のような一般人が「日本人は速筋の割合が低いんだ=そういうスポーツに向いていない」などと考える必要は全くないのです。それは単なる言い訳に過ぎません。




★「運動神経が良い」「運動神経が悪い」について

●「運動神経」とは?

「運動神経」は実際に体にある神経の事で、特に筋肉を動かす際に使われる神経の総称です。脳から出された命令は電気信号として神経を通って全身へと伝わります。それが最終的に筋肉へ伝わる事で、その筋肉を自分が動かしたいように動かす事ができるのです。ただし一口に「運動神経」と言っても、例えば足や腕などの筋肉を動かすためだけに使われている訳ではなく、実は内臓のように「意識せずに動かさなければならない筋肉(心臓は心筋、胃腸などその他の臓器は平滑筋)」を動かす際にも使われています。例えば怒ったり緊張したりした時に胃腸の活動が弱くなったりする事があると思いますが、何故そのような事が起こるのかというと、状況に応じて全て脳がコントロールしているからです。「運動神経」と聞くと「自分の意志で筋肉を動かす」時にだけ使われるように思ってしまいますが、そのように内臓の筋肉の動きを調節するのも運動神経の役割の一つです。

もちろん「運動神経が良い」という言葉の場合、大抵は「どんなスポーツでもそつなくこなせる事ができる」という意味で使われます。簡単に言えば「スポーツ万能」という事です。しかしスポーツが万能な人というのは、何も最初から万能だった訳ではありません。必ずスポーツが万能になるまでの過程が存在します。

競技の種類は様々ですが、スポーツでは「瞬間的に起こった事に対して素早く体を反応させる」必要があります。そのためには脳からの命令ができるだけスムーズに行われる必要がありますが、そうして命令を瞬時に行うためには、あらかじめその動作を脳が記憶している必要があります。よって「スポーツ万能」というのは「運動神経自体の良し悪し」というよりは「脳の記憶の問題」と言えると思います。「スポーツ万能」「運動神経が良い」と呼ばれる人たちは、人に見せる前から何度も特定の動作を繰り返す事で記憶していたり、あるいはそのような映像を普段からよく見ていて、実際に体を動かしていない時でも脳がその体の動かし方をよくイメージしているのです。だからこそ今までした事がないような咄嗟の動作であっても、瞬時に体を動かす事ができるのです。

また脳から出された命令は神経を通って体の隅々まで伝えられます。よって自分のイメージ通り、意志通りに筋肉を素早く動かすためには、「脳の命令がスムーズに伝わるような運動神経」が必要になります。これは「神経の質」とも言え、瞬発的な力を発揮する運動ほど「生まれながらの素質」が大きく影響してきますが、実は神経も鍛える事ができ、使い込む事によって次第に脳からの命令をスムーズに伝える事ができるようになっていきます。ちなみに脳も運動神経も年齢に関係なく鍛える事ができます。例えば高齢者が指先を使うトレーニングを行った事で脳や指先の神経が活性化し、ボケが改善されたというような事を聞きますが、あれと同じです。

そして「どんな複雑な運動もそつなくこなす」という事は「脳からの命令を伝える神経が細かく枝分かれしている」という事が重要になります。これは特に神経系が発達する幼少期(下記)において、どれだけ「多種多様」で「複雑」な運動を行ったかによって大きく変わると言われています。すなわち小さい頃からの継続した運動習慣が、将来の「運動神経が良い」「スポーツ万能」に繋がっているという事です。できるだけ小さい頃から体動かした方が良いとよく言われるのもこのためです。ただし前述のように神経は使い込む事が重要なので、発達する期間だけ運動を行うのでは不十分です。維持・発展させるためにはそれ以降も継続する必要があります。


●運動神経は生まれつきだけで決まる訳ではない

確かに運動神経には生まれながらの素質が少なからず関係しますが、前述のように運動神経の良し悪しは「神経系が発達する期間からどれだけ神経を使ったきたか」と「それ以降も神経を使い込む事」によって大きく変わります。この「神経系が発達する」期間はよく「ゴールデンエイジ」と呼ばれています。ゴールデンエイジは具体的には「3歳~12歳」の間とされ、特にこの3歳~12歳という期間では神経系が急速に発達すると言われています。将来「天才」と呼ばれるようなスポーツ選手はこの時期から多種多様・複雑な運動習慣を続け、神経を使い込んできたのです。ゴールデンエイジが終わった後も神経は使い込む事によって鍛える事ができますが、この期間ほど速いスピードでの発達はありません。よってこの期間にどれだけ神経を使うかは「その子の将来の選択肢」にも大きな影響を与える事になります。

更に「神経系の発達」という事で言えば、この期間から勉強を継続して脳を使う事でも神経系を発達させる事ができます。いわゆる「天才頭脳」と呼ばれるような人たちは、このゴールデンエイジの期間やそれ以前からたくさんの本を読み、たくさんの勉強をしてきたのです。このように将来スポーツ選手を目指す場合に限らず、技術者、学者、研究者などを目指す場合にも、この期間にどれだけ神経を発達させるかというのが非常に重要になります。

●「生まれつき」「遺伝」だけで終わらせない

それらを踏まえて改めて考えてみると、よく「うちの子は運動が苦手だから」「うちの子は馬鹿だから」と言うような親がいますが、それは単に「親の教育力がない(命令や指示をするだけなら例え親でなくてもできる)」という事の裏付けになると思います。「神経系を鍛えるような教育」は「親の命令や指示による詰め込み」ではできません。神経系を鍛えるためには「子どもが自発的に神経系を鍛えるための教育」、すなわち「子ども自身に考えさせる」事が重要です。例えばスポーツの上達のスピードを上げるためには「人に教わっている時だけ一生懸命努力する」のではなく、「例え誰も見ていない所でも自ら努力し続ける」「ボールを触っていなくても努力する(体を動かしていないときでも脳は使う事ができる)」事が必要不可欠なのです。子育てをする上では親にも得意・不得意があるかと思いますが、どんな親であっても、そのように「親が見ていない所でも子どもが自ら進んで努力するような教育」を行うべきです。

またそういう意味ではいくら両親が「運動神経が良い」場合でも、その子どもが「運動神経が良くなる」とは限りません。例えばスポーツ選手の子どもがスポーツ選手になるとは限りませんし、スポーツが苦手な両親の子どもでも逆にスポーツ選手になる事だってあり得ますよね、それと同じです。要はゴールデンエイジやそれ以前からの積み重ねが重要なのです。どこかの漫画にあるような言葉ですが、何もせずに諦めてしまったらそこで終わりなのです。決めつけは良くありません。


●使える筋肉と使えない筋肉

実際のスポーツでは多種多様な状況の中で、瞬時にかつ複雑に筋肉を動かさなければならず、それを行うためには例えば「助走」などむしろ反動を上手く利用して無駄なく力を発揮します。何故ならその方が体力をできるだけ温存しながら、試合終盤まで高いパフォーマンスを発揮する事ができるからです。一方、通常の筋トレでは「特定の筋肉に効かせるような力の入れ方」をし、またできるだけ反動を使わず静止した状態から筋力を発揮させます。つまりあえて筋肉を消耗させるように力を入れる訳で、そのような体の動かし方は実際のスポーツには不向きです。これが「重たいウェイトを使って鍛えたトレーニングは、スポーツなどでは役に立たない=使えない筋肉」として、ウェイトトレーニングが敬遠される大きな理由になっています。

しかしウェイトトレーニングを行って筋力が上がると、その筋力に頼った力任せのプレースタイルに変化する事があります。プロのスポーツ選手でもそういう人は多いです。それによって負担が増えるようなフォームに変わったり、関節や筋肉への負担を考えず無理に体を動かそうとしたり、あるいはウェイトトレーニングの時のように敢えて筋肉を消耗させる体の使い方をしたり、疲労が蓄積しているのに筋トレを続けたり等してしまいます。つまり体を鍛える事でむしろ怪我に繋がりやすくなり、それが「ウェイトトレーニング=体を酷使する=体が固くなる(ボディビルダーのように大きく発達させれば可動域は制限される)=怪我をしやすい」というイメージを定着させているのです。しかしこれは技術的な問題やメンタル的な問題が大きく、決してウェイトを使ったトレーニングだけが原因ではありません。

またウェイトトレーニングで筋肉が大きくなると見た目的にも大きな変化を及ぼすため、特にボディビルダーのように大きく筋肉が発達した人は一般人から見れば「不自然な筋肉のつき方」に見えます。それに加え、あの大きな筋肉はボディビルをするために鍛えたものであって、その大きな筋力が役に立つ状況は限られている事から、それも「役に立たない=使えない筋肉」と思われる大きな理由になっています。しかしこれに関しても、例えば野球選手はサッカー選手のようにサッカーはできませんよね。当たり前の事ですが、それはただ単にサッカーの技術がないからで、決して筋肉のつき方、筋力の大きさ、鍛え方の問題ではありません。それは一般人にも言え、何もスポーツ等をしておらず大きな筋力が必要ない生活をしている人にとっては、ボディビルダーのように筋肉を鍛える必要がありませんから「大きな筋肉=役に立たない筋肉」に感じます。しかしボディビルダーの人にとってはボディビルを行うためにはあれだけ筋肉を鍛える必要がある訳ですから、その人にとっては「役に立つ筋肉」と言えると思います。

「不自然な筋肉」という言い方をするとすれば人間は皆不自然です。例えば階段を登り降りするための筋肉やその体の使い方は、森の中で生活をしていれば特に必要ありませんし、天然の野菜だって誰かによって選別されているからこそ店頭に並んでいる訳で、「人の手が加わっていないものだけを利用して生活する」など今の時代できません。その意味では現代人の殆どが不自然と言える訳です。我々一般人からすればどんなスポーツ選手でも、その競技をするために筋肉を鍛えている時点で不自然ですし、ボディビルの中で生きている人からすれば我々のような一般人の方こそ「何で筋肉を鍛えないんだろう」と不自然に見えると思います。つまり結局のところ、価値観は人それぞれであり、その人にとって筋肉が必要ならばそれを求めれば良いのです。他人がとやかく言う事ではありません。




★「運動」という固定概念を改める

「毎日の運動習慣」と聞くと「運動を行うために時間を作る」と考えがちですが、体を動かす事を全て「運動」と定義すれば、わざわざ時間を作らなくても必ず「運動の機会」はどこかにあるはずです。例えば歩いて通勤・通学を行っていれば、その「歩く」という行動は一つの「運動」であり、毎日それを積み重ねていればそれが立派な「運動習慣」になります。にも関わらず、その運動の積み重ねによる何らかの良い効果が実感できないのは、「体の動かし方」「運動=激しいという誤ったイメージ」に問題があるからです。

これは前述した有酸素運動と無酸素運動、速筋と遅筋の特性を考えると分かりやすいです。改めて簡単にまとめると、無酸素運動は短時間に糖を消費し素早く速筋を動かす運動の事、有酸素運動は遅筋を使って脂肪を少しずつ燃やし長時間続ける運動の事です。すなわち「脂肪を落としたい」「脂肪を増やしたくない」と考えるのであれば、筋肉を素早く動かす運動よりも「筋肉をゆっくりと動かす運動」の方が重要になるのです。これを「歩く」という運動で考えてみると、例えば「足の運びを遅く抑える」「腕をゆっくり大きく振る」「歩幅を大きくする」「意識的に呼吸を行う」「時間をかけて歩く」ようにする事で有酸素運動のような効果が得られ、実はその方が脂肪は燃焼されます。このようにどんな動作も考え方や意識によって「効果的な運動習慣」にする事ができる訳で、その意識一つ一つを積み重ねれば体質も改善させる事ができます。「有酸素運動」に対するイメージと共に、「運動」に対するイメージも改める必要があるでしょう。

これはその他の様々な動作においても言う事ができます。例えば掃除で床に掃除機をかけるとします。普通なら手で持った掃除機を素早く前後に動かしますが、その動かし方だと無酸素運動になってしまい、掃除自体は早く終わりますが疲れて次の家事が続きません。よって「呼吸をしながらゆっくりと大きく」掃除機を動かすように掃除をします。ゆっくりと動かす事では家事などを行う時間は長くなってしまいますが、主に遅筋が使われるので費やした時間ほどは疲れにくくなります。ですので次の行動にすぐ移る事ができ、結果として家事全体の時間は短縮されます。またそのように意識して動作を行えば、今まで無酸素運動のように行っていた掃除を一つの有酸素運動にする事ができます。一度に燃やす事のできる脂肪の量は多くありませんが、それを毎日積み重ねていけば日常的に行っている当たり前の習慣一つ一つが運動習慣になり、それを「体質を改善する機会」にする事ができるのです。

また「運動」と聞くとそのように「体を動かす」というイメージを持つのですが、例えばストレッチのような動きを伴わないものであっても、「筋肉を動かす」という意味では運動と考える事ができると思います。特に日常的に使われている筋肉が「腹筋」と「背筋」です。腹筋や背筋は常に姿勢を維持するために働いている筋肉です。「姿勢を維持する」という言葉だけを聞くと、体を動かしていないので「運動」のようには思えませんが、実際には姿勢を維持するために腹筋や背筋にある「遅筋」が機能しており、姿勢を維持するだけで少しずつ脂肪が燃えているのです。1日中ずっと立っている訳にもいかないので、姿勢の維持だけで1日に燃やす事のできる脂肪の量は多くありませんが、意識的に行って毎日積み重ねていけばそれも「運動習慣」になり得ます。

このように、体を動かす運動も動かさない運動も全て「運動習慣」にする事ができれば、日常生活をただ過ごすだけで脂肪は勝手に燃えていきますし、筋肉もついてきます。それが「脂肪が溜まりにくく燃えやすい体質」なのです。よく有名人で「食べたい物をたくさん食べていて大して運動もしていないのに何故体型が維持できるの?」と疑問に思う事がありますが、その殆どはこれで答えが出ると思います。ちなみにですが、上記のような「ゆっくりとした動作で行う筋トレ」の事を特に「スロートレーニング」と言います。スロートレーニングは通常の筋トレをゆっくりとした動作で行い、できるだけ筋肉が緊張した状態を維持しながら曲げ伸ばしをする事になります。それによって少ない反復回数で効果的に筋肉を鍛える事ができ(酷使による慢性的な怪我も予防できる)、上記のような「日常生活における運動習慣」による一つ一つの積み重ねに更に厚みを持たせる事ができます。スロートレーニングは通常の筋トレをただゆっくりと行うだけであり、筋トレに関する多少の知識と自分の体さえあれば誰でもできるのでオススメの方法(筋トレ=ダイエットではなく、体を動かす機会の1つとして考えるべし)です。

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