
しかし基本的にエネルギー代謝で利用される酵素、あるいは胃液や腸液などの消化酵素は、体の中にあるアミノ酸から合成されています。そのため外部から酵素を取り入れても、その酵素がそのままの形で、人体に何らかの作用をもたらす事はできません。また酵素は前述のように蛋白質の一種ですが、一般的な蛋白質よりは複数連なった分子が少ない(分子全体の数が多い)ため、胃や腸で分泌される消化酵素によってスムーズに分解する事ができます。すなわち酵素としての機能があっても、胃や腸ですぐに効力を失ってしまいます。更に酵素は蛋白質のため、加熱調理によってもその効力を失います。大抵の酵素はアミノ酸として吸収される事になるでしょう。
もちろん全ての酵素が単体のアミノ酸まで分解されてしまう訳ではなく、一部はアミノ酸とアミノ酸が結合した「ペプチド」の形で運ばれるものもあると思います。しかし実際に体の中で使われている酵素は別として、例えば植物由来の酵素の中にある特定の蛋白質の構造が、人体で作られる酵素の材料に、そのままの形で使われるとは到底思えません。白身魚のコラーゲンのように高分子、かつ実際に体の中に存在するものなら、ペプチドの形で運ばれる事によるメリットもあると思いますが、酵素の場合、そうではないため、やはりアミノ酸としての作用しか得られないと思います。仮に植物由来の酵素に特有の構造があり、それが人体に何らかの作用をもたらすとしても、免疫機能に「異物と誤認」されてアレルギー症状を起こす可能性もあります。
ちなみに酵素の中にはパイナップルなどのように蛋白質を分解する酵素が含まれている場合があり、これは粘膜に刺激を与える事があります。人によっては顔、口、喉などにアレルギー症状を起こす場合もあります。ただし酵素は蛋白質の中ではそのように分子が小さく分解されやすいため、胃液によって容易に分解されます。このため乳アレルギーや卵アレルギーのように、下痢などの症状まで起こす事は稀です。一方、一般的に「酵素を含む」と謳われているサプリメントの多くは、アミノ酸あるいは蛋白質としての総量がそもそも少ないです(それでもアレルギーが起こる可能性はゼロではない)。どうせアミノ酸を摂取するならプロテインを飲んだ方がマシです。