
しかし実は現在から数千年前の古代文明の時代に、温水または冷水を利用した公衆浴場が既に存在していたと言われています。つまり温水または冷水を浴びたり浸かったりする文化は、その時代から一般人に受け入れられていたのです。またスポーツ施設に併設された浴場は「心と体を清める」という今で言う「スポーツマンシップ」のような考え方の元になったとも言われています。しかし宗教・安全(男女混浴+裸だったため好ましくないとされた)、衛生(流行り病やそれに関する噂)等の観点から、時代が進むにつれて徐々に廃れていったそうです。
当の日本においては仏教の伝来(記録上では飛鳥時代の西暦552年頃とされている)と共に「体を川や滝などの水で清める」という部分から伝わったと考えられています。そしてそこから少し進んだ奈良時代にようやく風呂の原型が生まれます。ただし当初作られた風呂は実際に水を浴びる訳ではなく、薬草などを溶かした湯を沸かし、その蒸気を浴場内に充満させるいわゆる「蒸し風呂(サウナ)」がメインだったそうです。もちろん浴槽に浸かる形式もあったのですが、蒸し風呂とは全く別物という扱いをされており、元々「風呂」という言葉は「蒸し風呂」を指す言葉でした。それがいつ頃(少なくとも江戸時代には庶民の間に定着)から現在の形式になったのか定かではありませんが、時代が進むにつれてその2つが融合し、現在の風呂になったと考えられます。
その他、日本は水が資源として豊富に存在する国であり、一般家庭でも水を確保するのが容易だったという事も関係しているでしょう。気温が年中高く雨が降らないような国では水は貴重な資源なので、毎日お風呂に入るためだけに水を使うのはもったいない(川や湖があればそこで水を浴びれば良い)と感じる人が多いようです。また年中気温の低い地域ではそもそも汗をかかないので、体を温める目的でたまに温水に浸かる事はあっても毎日は浸かりません(やはり液体の水は貴重)。