
それを踏まえて考えてみると、確かに水素を注入し水素水を製造した最初の時点では、それは明確に「水素水」と呼べるものであり、「水素が水に溶けた状態を維持する事ができる条件」も整っているかもしれません。しかし例えば運搬される際に容器及び水素水が大きく振動すれば、多くの水素は水から飛び出て容器内を彷徨ってしまう事が考えられます。製造した後~店頭に並ぶまでに全く振動を与えずに運ぶ事は不可能ですから、少なくとも最初の状態よりは溶けた水素の濃度は落ちているはずです。更に前述した水素の性質から、我々が容器の蓋を開けた瞬間にその水素は全て空中に飛散します。水素は水に溶けにくいので、一度水素として自ら出れば二度と元には戻りません。よって開封してから時間が経過するほどに水素水の濃度は低下し、いずれ「ただの水」になります。
別の視点で考えてみると、水素自体は非常に安定的な元素であり、胃酸で溶ける事もないため、確かに胃からも吸収する事ができると思われます(高濃度の水素水を飲むと、少なくとも20%以上は水素の排出量が増えたという研究もある)。ただしそれは「ある程度濃度」がある場合の話で、前述のようにそもそも開封した時点で多くの水素が失われている可能性があるため、その効果は非常に微々たるものと考えるべきでしょう。確かに水素は酸素と結びつく事で水になります。例えば活性酸素は通常の酸素と比べても反応性が高く、様々な悪さをする事で知られていますが、「その活性酸素と結合するまで、水素をそのままの形で運ぶ事ができるか」というとかなり怪しい所です。それだけ水素は失われやすいのです。
ならば、濃度の高い水素を直接胃や肺に運ぶしかありませんが、高濃度の水素が一気に肺や胃に流れ込んだ場合、その圧力によって肺胞などの組織を破壊してしまう事があります。もちろんその辺に売っている低濃度の水素水ではそのような事は起こり得ませんが、水素を作る事自体は難しくなく、水素の効果を試そうとする人がいないとも限らないので念のため注意しましょう。ちなみに水素は腸内でも作る事ができ、実は水素水から水素を摂取するよりも、腸内で作る量の方が多いという悲しい事実があります。